田中辰雄『あわてた権利行使は貰いが少ないか』 2022
https://gyazo.com/22c9dcde4effe51aebf39f1926ee6655
本稿の趣旨は現行の著作権法を守らないという考え方がありうるということである
権利行使しない方がいいとき
宣伝効果が大きいとき
二次創作
ファンの裾野を広げる
新人のインキュベーションが起きる
こっちは(企業にとって)自明じゃないな基素.icon
ファスト映画は宣伝効果があり、ファンコミュニティを作る可能性があったが逮捕者が出たのでその道は無くなった Webとデジタル化によって著作権法と現実が構造的にずれた
1.はじめに
(2) 売上は上がるのか下がるのか
(3) 漫画での実例
(4) 二次創作
3.行動変容:デジタル化とネットの衝撃
(1) デジタル化以前
(2) デジタル化以降
(3) 権利行使を控えるだけで良いのではないか
権利者が黙認することだけに期待をしてはいけないという話
(1) ファスト映画は売上を増やすか減らすか
独自のアンケート調査
確定的なことが言える調査ではないが、売り上げを増やす要素がやや優勢と言う考察
(2) ファスト映画の望ましい姿
(3) 歴史的教訓:行使しなければよい,で済まない理由
5. 終わりに:ではどうするか
法律実務ではある行為が著作権法に違反しているかどうかを答えることが多いようである。
このとき本稿の趣旨を踏まえるならどういう示唆が得られるだろうか。
本稿の趣旨は現行の著作権法を守らないという考え方がありうるということである。
しかし法律家として法律を守らなくてよいと答えることはできないだろう。ただ,そこに留意点をつけ,相談者に考えさせることはできるのではないだろうか。
たとえば,ある企業から,自社のロゴなり権利物がネットのどこかで使われていることがわかったのでなんらかの措置をとれるかと相談してきたとしよう。見たところ確かに無許諾利用であり権利侵害で差し止めを請求することはできるとする。
このとき,著作権法違反で差し止め請求できます,と答えるのはもちろんである。しかし,その後で,差し止めせずに放置する手もあります,と言い添えることはできるのではないか。
自社の権利物を使っているサイトが宣伝に役だっていそうならそのままに放置するのも手である。
あるいは URL をはってこちらにリンクを張るように言う事もできるだろう
企業側にそういう見識がある人が入っていてもおかしくない
逆に作品を利用する側でも同様である。たとえば,ある個人が子供の成長動画をアップする際に,挿入としてアニメのいちシーンを使いたいのだが,著作権法上,大丈夫かと聞いてきたとしよう。
無許諾での利用になるので著作権法上は違法になる可能性がある。そう答えて終わることともできる。
しかし,次のように言い添えることもできるだろう。「無許諾では違法です。仮にそのアニメ会社から抗議があれば謝罪して削除しなければなりませんし,それ以上の要求をされるかもしれません。ただ,作品の宣伝にもなるし,ファン活動の一環として問題視しないかもしれません。」と。
これは事実を並べただけで,あとはその人の判断に任すという対応である。
ネット上にはアニメキャラを使った無数の MAD をはじめとした二次創作品があふれている。それらを見て相談者が利用に踏み切るか,それとも著作権法を順守するかは彼の判断に任される。
要するに著作権法上の合法違法だけでなく,とった行為の帰結,さらに現状がどうなっているかを含めて相談者に回答してはどうかということである。そのうえで相談者に決めてもらう。
いかにも責任のがれ,あるいは奥歯にモノが挟まったような言い方ではある。
しかし,ネット上には,厳格には著作権違反の無許諾利用があふれており,しかし,それゆえにこそ創作活動がちゃんとまわっているという皮肉な現実がある。
これは現実と著作権法がずれているが故であり,このずれを自覚するなら,奥歯にモノが挟まった言い方になるのはいかんともしがたい。本来は法整備が待たれるところであるが。